2013年4月8日月曜日

【管理人の独り言】デジタル四方山話〔1〕 -カメラの巻-

  
  近世・近代を研究対象にした地方史研究者にとって、写真を撮るの機会はたいへん多い。

  第一に研究対象である古文書は貴重品で、持ち出し不可であるため、写真で複製を作成することになる。近世・近代の古文書になるとその数量は膨大で、私が大学院生の頃などは、1日で500コマ撮りマイクロフィルムで1本半撮影などと、しゃかりきに撮影したものである。20年たった今は、カメラが重くて大型の平河製マイクロフィルムカメラから、軽量コンパクトなデジタルカメラに変わったものの、相変わらず1日に古文書を数100コマ撮影することがある。

  昨年夏も、「阿波学会」調査に参加し、東みよし町の古文書を1日に300コマほど撮影した。

  また、美術品や民具など、立体物を撮影する機会も多い。私は本職が小さな博物館(松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館)の学芸員なので、図版やパンフレットの作成等々、写真を撮るのも仕事の重要なテクニックである。

  別に学芸員にならずとも(高校・大学の先生や、民間の研究者であっても)、資料調査の過程で記録しておきたい書画・骨董に出会うと、普通に(ごく当然に)写真を撮影するであろう。立体物の撮影になると、背景・光線・露出などに注意し、1コマの撮影に長い時間をかけて行うことになる。

  結果、歴史研究者の少なからぬ人々が、カメラをはじめ撮影機材にこだわりを持つようになる。

  我が徳島地方史研究会においても、TK先生を筆頭に何名かの顔が思い浮かぶ。

  実は、私もそれに連なる1名で、マニアックな高級機は経済的に無理だが、安価な普及モデルでいろいろ試すのが大好きである。

  そんなこんなで、TK先生が某R社の高級コンパクトデジカメをベタ褒めしているのを聞き、ならばとR社の普及モデルをアマゾンで購入してみた。ここ10年あまり、古文書の撮影はバリアングルモニター仕様のC社のデジタルカメラを愛用しているので、今回購入のR社の普及モデルは、イベント記録など日常持ち歩くスナップ撮影用の位置づけである。

  ところがこのカメラ、なんともクセモノなのである。ホワイトバランスが不調で、室内で撮影すると色が赤く仕上がってしまう。メニュー画面から設定を色々いじっても全く改善されない。ついには「不良品か?」と諦めかけていたところ、“ふと”気がついた。

  「デジタルカメラももコンピュータープログラムで作動しているはずだから、もしかして修正プログラムが発表されているのでは?」

  予想はビンゴであった。R社のホームページには、我が愛機の修正プログラムが掲載されていた。やはり、ホワイトバランスに関する修正である。

  やれやれと胸をなで下ろしたのも束の間、すぐまた疑問が沸き上がった。通信機能を持たないデジカメのプログラムを、どうやって修正(アップデート)するのだろうか?

  ホームページで手順を確認すると、なるほど納得である。ホームページからパソコンに修正データをダウンロードし、そのデータをSDカードに移す、そしてそのカードをカメラに挿し込むと、修正プログラムが既存プログラムを上書きしてアップデートされる仕掛けである。

  無事アップデートを終えると、写真の出来栄えは見違えるようになった。ようやく納得の色である。

  やれやれ一件落着と言うべきところだが、それにしても不十分な状態でよくまあ販売に踏み切ったなぁと思う。「多少難があっても、1分1秒でも早く市場を押さえよう!」、つまりは「拙速は善」ということだろうが、正直、ユーザーとしてはあまりいい気がしない。

  我が執筆原稿も、ついつい締め切りに四苦八苦し、「どうせ校正で直せばいい」と、不十分なままに出稿した過去が思い出される。必ずしも「拙速は善」では無い。他山の石として、心したいものである。

(当ホームページ管理人 松下師一)